fabry2009
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10注1:MRS:magnetic resonance spectroscopy: 磁気共鳴分光法注2:QSART:quantitative sudomotor axon refl ex test:定量的軸索反射性発汗試験ファブリー病の神経症状は,脳血管障害による中枢神経症状,末梢神経障害による疼痛発作,自律神経障害による発汗障害(発汗障害は汗腺自体の障害も関与)が代表的である。脳梗塞はファブリー病の大多数の患者で死亡の直接原因となっている。症状(古典型)─神経症状─脳血管障害発症頻度ヘミ接合体男性では,発症頻度が75%,発症年齢は平均32歳と報告され14),ヘテロ接合体女性でも認められる(表1)。病態機序血管の内皮細胞や平滑筋細胞へのスフィンゴ糖脂質沈着に伴う血管内腔の狭小化が頭蓋内小動脈の進行性閉塞の原因となる。また,僧帽弁逸脱症,肥大性心筋症,若年性心筋梗塞の合併による心原性脳塞栓症も脳梗塞の原因となり,沈着に伴う血管壁肥厚と構造の破壊が血管の蛇行拡張に関与すると考えられている。そのほか,腎障害による二次性高血圧や糖尿病の合併頻度も高く,これらによる動脈硬化も血管障害の増悪因子となる。症状の特徴ファブリー病としての脳血管障害症状の特徴はない(表2)。画像所見脳MRIでは様々な程度の梗塞巣を認める。白質病変は年齢に伴い増加し,女性保因者も同様に白質病変は年齢に伴い増加する(表3)。病理所見椎骨脳底動脈,頸動脈(低頻度)で,血管の拡張,蛇行がヘミ接合体,症候性ヘテロ接合体では認められる。脳血管の動脈および細動脈の内腔は狭小化し,血管内皮細胞内に脂質の蓄積を認める。末梢神経障害・自律神経障害疼痛発作(Fabry crisis)数分から数時間持続する四肢に広がる激しい疼痛症状で,周期的に繰り返し認められ,間欠期には症状は消失する。2歳ごろより出現し,運動,発熱,暑い気候で誘発される。疼痛発作を引き起こすメカニズムは不明な点が多い。発汗低下・無汗6歳ごろより出現する。原因は脂質の蓄積による汗腺自体の障害と汗腺支配無髄神経線維の障害と考えられている。また,汗腺自体の障害の関与も大きいとされる(表4)。自律神経障害血圧調節機能の障害による血圧の易変動性,腸管運動不良に伴う便秘や下痢,涙や唾液産生の減少に伴う症状が認められる。ときに起立性の血圧低下や,対光反射の障害を認める場合がある。病理所見・末梢神経:小径有髄線維,無髄線維の減少を認め,大径有髄線維は比較的保たれる。血管内皮細胞,pericyte,平滑筋細胞,傍神経細胞,線維芽細胞に径1~2 μmの特徴的な封入体を認める。・自律神経系:自律神経節細胞,自律神経一次ニューロン,脳幹網様体,視索上核と室傍核,扁桃核,仙髄のOnuf核,後根神経節などに広範に脂質の沈着を認める。

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