fabry2009
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12びまん性体幹被角血管腫は,ファブリー病で最もよく知られている皮膚症状の一つである。また,ファブリー病では学童期ころから発汗低下がみられる。症状(古典型)─皮膚症状─びまん性体幹被角血管腫びまん性体幹被角血管腫は,他のライソゾーム蓄積症などでもみられる。ファブリー病の好発部位は外陰部・腰臀部で,学童期から発生する。次第にその数は増し(数個~数十万個),大きさも増す(0.1 mm~5 mm大)。経過初めは0.1 mm大の点状赤色斑が出現し,いつまでも消失せず,0.5 mm大になると皮膚表面より少し膨隆して小さな丘疹となる。数十年が経過すると径1~5 mm大となる。発生した時期によりその経過が長くなり,大きさも大きくなる。このため血管腫は大小が混在した状態になる。大出血はしないまでも,止血しづらくなるが,通常は圧迫のみで止血できる。血管腫が0.5 mm大以上になると,盛り上がり丘疹となるが,表皮の角層が厚くなる(そのため「被角」と命名された)。原因血管腫(血管拡張症)が発生する理由は不明であるが,血管壁を構成する血管内皮細胞や周皮細胞,それに真皮結合織を合成する線維芽細胞内にグロボトリアオシルセラミド(GL-3)が蓄積し,細胞が死滅する。次いで細胞が再生されるが,この細胞も死滅する。これを繰り返している間に,真皮結合織の脆弱化が起こり,血管拡張に至ると考えられている。その他の症状肘・膝や掌蹠に血管拡張がみられることもある。掌蹠では,オスラー病や全身性強皮症の血管拡張と酷似している。体幹部で血管腫が散在する場合は,さくらんぼ(老人性)血管腫と臨床的には酷似する。老人性血管腫も10歳代から発生することがあるので鑑別に注意が必要である。陰嚢被角血管腫が20歳以前から発生する(健常者では30歳以降)。また,母斑性の限局した被角血管腫が若年者にみられるが,発症は生下時である。発汗低下発症時期発汗低下は学童期頃からみられる。原因エクリン汗腺の汗の分泌部にはライソゾーム内にGL-3の蓄積が著明にみられ,それによる細胞の変性が目立つ。このために細胞の機能障害(発汗の低下)が起こっていると考えられる。また,自律神経の変性による発汗低下の可能性もある(→P.10神経症状)。経過この障害は進行性で,歳月と共に発汗低下は進行する。ある程度以上の破壊が起こると,この変性は非可逆的になると考えられる。発汗低下は,成人以後のQOLを低下させる。成人してからの職業(場)選択にも大きな制約要因となること(暑い所では働くことができない等)に留意すべきである。

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